車椅子情報を活用しよう
私たちヘルパーとして、痴呆のお年寄りのケアはもちろんのこと、家族のケア、介護支援も大事だと考えています。
365日休みもなく介護するということには限界があります。
「これは仕事だから」と割り切っていても、息苦しい時も正直ありますから、逃げ出したくても逃げ出せない家族の存在をもっと考えなくてはならないように思うのです。
在宅ケアは、常に一緒にいなければならない家族が支えているのです。
ヘルパーは、だいたい1時聞から2時間くらい、家族も家にいるという条件で訪問することが多いのですが、長時間、またはご家族がいなくてお年寄りと2人きりという時でも、私たちは伺います。
家族の介護のヘルパーということではなく、あくまで介護が必要な方へのヘルパーですので、人手がある時(ヘルパーがいる時)くらいは、家族の方には介護を離れ、自分の時間や空間を持っていただきたいと思っているからです。
家族がリフレッシュし、気持ちにゆとりができれば、お年寄りに対する態度も少し変わります。
お互い元気にもなります。
お年寄りが閉じこもりにならないようにと、いろいろな角度からアプローチをしますが、介護者に対するアプローチは忘れがちです。
高齢社会となり、老老介護(高齢者が高齢者を介護する)が当たり前のように行われていますが、共倒れ、もしくは介護者が先に倒れてしまうケースも珍しくありません。
「私が死んだらこの人はどうなるのだろうと思うと、倒れてなんかいられない。
この人も自分も毎日必死で生きているわ」と言われた介護者の言葉が胸に刺さっています。
在宅で介護をしているご家族の苦労は大変なものです。
24時間ターミナルケアをさせていただいたこともありますが、仕事だから、チームだからできたのであって、1人で、しかも10年、20年とは、決してできないことだと強く感じました。
私たちは、ヘルパーの役割として、家族を閉じこもりにせず、リフレッシュをしていただく介護支援をしていきたいと考えています。
痴呆の人でも、自宅で、住み慣れた地域で、その人らしく生活する方法が必ずあるはずです。
痴呆だからとか、痴呆ではないからという関わりではなく、1人の人としての関係づくり(本人、家族、地域社会などとの)を大切に考え、心と時間にゆとりを持ったケアを心掛けていけば、きっと道はみつかると思います。
行方不明の常連になっているのは、Aさん(83歳)というなかなか大変な痴呆のおじいさんで、今はF市の老人保健施設S苑の痴呆棟に入所中なのだが、与謝の園で受け入れてくれるだろうか」と電話がありました。
「何がどう大変な人なのですか」と尋ねると、「今までに7回も行方不明になるほど俳梱がひどくて、電車に乗って京都駅や出身地の滋賀県高島郡の方までも行ってしまって、今まで何回も捜索願を出し、ほんまに大変な人だったんだ」という答え。
駅まで約3時聞かかります。
いろいろな俳個老人を経験している私でも、思わず「えっ、行方不明に7回もなったのですか」と言ってしまうほどAさんの俳佃歴は、強烈でした。
その後わかったところでは、重度の俳個癖を持つアルツハイマー型の痴呆老人で、家の近所をウロウロするというレベルではなく、タクシーやパス、他人の自転車に無断で乗るなどして遠くまで行き、行方不明になった末に警察に保護されるという、田舎ではあまり例のない、なかなか元気な俳梱おじいちゃんだということがわかりました。
老人保健施設に入所された経過は、家に連れて帰ってもすぐに「ちょっと滋賀県に行ってくる」と言ってふらっと出て行ってしまうことがその年の春頃から続いた。
その度に、家族が遠くまで自動車で迎えに行ったり、保護されている警察で何度も同じようなことを事情聴取されたり、謝罪したりすることに疲れ果て、I町が介入して緊急避難的に入所となったのだそうです。
老人保健施設S苑は、最近精神科の病院が併設した新しい施設で、面接に行ったスタッフの報告によると、痴呆棟で見たAさんは、Aと下に降りることができないため、今のところウロウロするぐらいで特に問題はなく、本人が諦めているのか、薬でおさまっているのかわからないということでした。
この時私は、Aさんも年齢は83歳だから、遠くまで行くパワーもなさそうだ。
施設の中では結構落ち着いていて、よくいる「問題行動が重度で、大変な人」とレッテルを貼られた人で、俳個についてはそれほど心配することはない、と超楽観的に,思っていました。
結局のところ痴呆老人の場合、施設に来て生活してもらわないとどうなるかわからないことが多く、その施設の生活環境、介護の仕方が本人にとって吉と出るか、凶と出るのかは、出たとこ勝負というパクチみたいな一面もあるのです。
まじめな福祉専門職からは、ひんしゅくを買いそうですが、「そうそう」とうなずいてくれている人も多いと私は思っています。
最近、生活歴や病歴、問題行動歴などを根ほり葉ほり聞き出し、対象者のことを何でも知っているような顔をする福祉職員(特に相談業務ていない者)が多くなったと思いませんか。
やっぱり実際に介護して、その人の生活を見なけりやいろんなことわかるはずないですよね。
面接ではわからなかったことすが、大変な人が入園されるとなると、問題行動や障害の重さという情報だけが1人歩きして、職員みんなが好奇心一杯で入園されるのを待つという現象が起きます。
から寮母さんの間では話題になっているし、前日には夜勤になる寮母さんが「私、明日夜勤だ。
夜は大丈夫だろうか」と心配しているという状況でした。
午後2時、玄関に長男の車が到着。
元気でパワフルなおじいちゃんをイメージして待ち受けていた私たちの目に入ってきたのは、おばあちゃんに寄りかかり、手をプルプルと震わせながら弱弱しく歩く痩せたおじいちゃんでした。
今日の様子をおばあちゃんに聞くと、朝から上肢に不随運動があって病院で血液検査と脳の検査をしたが、異常はなく、以前からちょこちょここんなことがあり、時聞が経てば治ると思います、ということでした。
元気なパワフルおじいさんを想像していたので、ちょっと期待はずれでしたが、予定通り痴呆性老人用のモニターカメラ付個室に入園してもらい、与謝の園でのAさんの生活がスタートしました。
入園してすぐにわかったことですが、なんとAさんは、俳句をずっと趣味としていて、地域の婦人会などで教えていたほどの俳句好き老人だ、ったのです。
ぎんこうを作るために吟行(俳句を作るために外に出かけること)に出かけるという習慣が関係していたのです。
こういう時、私みたいな単純な人聞は、「ゃった! 俳個対策の糸口が見えた。
Aさんは、俳佃する俳諾老人だったんだ」なんて、すぐにおもしろおかしく喜んでしまうのです。
ダメですねー。
入園時に心配していた上肢の不随運動も消え、歩行もしっかりできるようになったAさんは、自分の俳句作りをみんなにアピールするごとく、猛烈な勢いで俳句を毎日作り続けました。
その数はハンパじゃなく、俳句用の色紙を買ってもすぐに書いてしまうため、とうとう色紙の裏も使わなければ要求に対応しきれないほどでした。
入園して2週間程度経過した頃のAさんの生活は、俳句作りで始まり俳句作りで終わるというものでした。
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